「夏 永遠に」―オリジナルに忠実であることとは何か

【ギターの録音時に使用された手書きのコード譜(1996年)】
当ブログは今年の4月以降まったく更新していませんでした。誠に申し訳ありません。自主制作映画『アヒルの狂想曲』にかかりっきりだったため、この間、音楽制作はストップしていました。
ということで、久しぶりの音楽制作――。それは、自分にとって思い出深い、忘れかけていた遠い昔の、友人が作った曲。その復刻版すなわちリマスターです。曲名は、「夏 永遠に」――。

もう何年も前に、この「夏 永遠に」をリマスタリングをしようと思っていました。その思いもまたすっかり置き去りになって忘れ去られ、歳月だけが過ぎました。歌っているのは、曲を作った本人――私の友人だった――小林泰樹と、私ことUtaro。いわゆるフォーク系ラヴ・ソングのデュオという形になっています。録音したのは1996年。そして私があとになって自分のヴォーカルを吹き込んだのが、翌年の1997年。当時はDATをマスターにし、16bit/48kHzで記録。そうして本当に長い間、この曲は誰にも聴かれず保管庫の中で眠り続けていましたが、2019年の12月に、ようやくリマスタリングを完了することができました。

1996年から97年にかけてのレコーディングの経緯については、ホームページに記載済みなので、ここでは省きます。当時のレコーディングの具体的な内容について、憶えている範囲になりますが、ここで記しておくことにします。

当時使用していたMTRは、TASCAMの「MIDI STUDIO 644」。このミキサー&マルチ・トラック・レコーダーは、市販のカセットテープ(ハイポジションテープ推奨)にDBXのノイズリダクションをかまし、倍速で記録できる4トラック・マルチ方式で、諸々を合わせると16チャンネル入力であり、3バンドEQやAUX入出力、外部からのインサート・エフェクトなどを駆使してミキシングすることができる高品位なMTRでした。後年、時代の流れで安価なハードディスク式のデジタル・マルチ・トラック・レコーダーに買い換えるまで、90年代の後半までこの「MIDI STUDIO 644」を使用していたことになります。

「夏 永遠に」のレコーディングで使用したマイクロフォンは、アコギとヴォーカルの両パート共、コンデンサー型のAKG C451E。このマイクロフォンは主にピアノやドラムのシンバル系のオーバートップを収音するのに使用されますが、中高域にピークがあり、一般的にヴォーカルにはほとんど使用しません。が、使えないこともないです。現にその頃、唯一私が所有していたのはこのコンデンサー型であり、ヴォーカルによく多用していました。
しかしながら、この曲のレコーディングに関して言うと、当時の私の耳の未熟さ――そのサウンドに対する見識が不十分だったため、録音時のセッティングやEQ処理の仕方がとても悪く、両パートのサウンドが結果として、硬くて奥行きに欠けているのが、今聴くとよく分かります。これは必ずしも、C451Eの特性の影響だけではなく、私の技量の無さに問題があったと思っています。本当はもっと、たとえC451Eであっても、ふくよかなサウンドが録音できたはずなのです。

【Sonnox OXFORD REVERBプラグイン】
そのことはともかくとして、今回、1997年のDATマスターをアナログミキサー経由でPro Toolsに取り込み(32bit浮動小数点/96kHz)、補正目的のミキシングをおこないました。当時はリバーブ系のエフェクターにおいては、ZOOMの「1204」のプレート・リバーブをアコギとヴォーカルに付加していました。ミキシングでのモニタリングの際、リバーブのブライト感がちょっと物足りないなと思ったので、Sonnoxのプラグインの「OXFORD REVERB」のプリセット、“EMT 140 2.4sec”を適量付け足しました。これにより、ギター及びヴォーカル共、その残響に奥行き感が増したと思います。

音質に関しては、当時のカセットテープというアナログの特性が加味されており、今回のミキシングでは、周波数的にきつい中高域成分やモコモコとしていた中低域をカットしたりして整え、広がりすぎていたレンジをやや抑える意味でのコンプ処理を施したりしています。また、マスタリング時のプラグインでは、「OZONE 9」を採用し、個人的に充分使い慣れたこのプラグインで、EQの微妙な箇所を修整するだけに留め、もともとのDATマスターのサウンドとほとんど変わりない印象に仕上げました。まあ、実際はほんの少し、ヴォーカルが前面に強調されていたりするのですが…。
いずれにしても、「夏 永遠に」の2019年リマスター版は、オリジナルにできるだけ忠実なサウンドということになり、当時の録音の状況を多分に残した形となっています。

真剣な思いで自身の恋愛を吐露しつつ、それを情感のこもった歌に仕立てた友人・小林泰樹に、私は敬意を表したいと思います。今の時代では、“青春”という言葉は少々陳腐に聞こえてしまうのかも知れませんが、まさに自分達が90年代の、そうした年頃のリアルタイムにこの曲を刻むことができたのは、奇跡だったとも思うのです。
若い時には若いなりの歌い方があるのだなということを、あらためて感じています。どうか、この「夏 永遠に」をお聴き下さい。無料配信中です。

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