『Gの洗礼』を大転換!

「郷愁と彼方の非線形」―TR-08を使ったリズム

【Roland Boutique TR-08】
誰も関心を持たないガラス製の乾板写真(明治の頃と思われる、縁も所縁もない家族の肖像写真)を2年前に入手して、その半年後くらいにまた別の家族の乾板(数枚分)を入手してから、その乾板はずっと保管されたまま開封していませんでした。スマートフォンに内蔵されているデジタル・カメラが今日の主流となっている時に、古いガラス乾板の「像景美」に食指を伸ばすとは、いくらカメラ好きとは言え、我ながら些か物好きにも程があると言わざるを得ません。

数日前のこと。いよいよ放置していたこのガラス乾板を開封して、2年前と同様、デジタル・スキャンしようと企てたのですが、準備の最中、ぼんやりと目にした家族の肖像らしきものにすっかり愛着を感じ、いっそのこと物語を膨らまして夢想し、人間が写真の中で今だ息づいている「何か」、そこからインスパイアされた音楽――を作ってみようかと思ったわけです。
【シングル「郷愁と彼方の非線形」】

それが「郷愁と彼方の非線形」(Nostalgia and Beyond the Nonlinearity)というタイトル曲の企画。写真から迫り来る郷愁感を言葉で表すのと同時に、音楽でも表現してみようという試みです。

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音源でまず選んだのはRoland TR-08。昨日、これを使って5分ほどのリズム・パートを作りました。ここにあと2パート程度のシンセ(おそらくYAMAHA MOXF6を使用するであろう)を付け加え、もしかするとさらにヴォーカル・トラックも加えられるといいのですが、ともかくシンプルなアレンジで、言わばひんやりとしたチル・ウェーブのようなものができれば…。そういう方向の曲を作ってみようと思ったわけです。TR-08ってちょっと熱量高めなサウンドだから、チルに合わないのではないか、という個人的な懸念も、何とか払拭したい。むしろTR-08をチルの王様に仕立て上げたいのです。

昔は“ヤオヤ”と呼ばれたTR-808(1980年発売)の原型を、21世紀に完全にリプロダクトしたRolandのBoutique TR-08。私は過去にオリジナルの“ヤオヤ”を使ったことがないので比較することができないのですが、当然808はもっと重くて大振りな機材だったから、このコンパクトにまとめられたTR-08はかなり高品位に収斂した使い勝手の良いものだと思います。アナログで精確なテンポ、音程を繰り出せるという技術に対して、もっと敬意を表しなければならないのではないか。またこのデジタルの特性にはないアナログの親密さというか親和性というか、音のゆらぎに対しても、リズムマシンの理屈を知る学習機的な側面もあります。

実際に使ってみて、私が妙に感動したのは、パターンを作る時の肝となる“Accent”。808を使ったことがなかったから、この感動は大きいです。この“Accent”こそが、古今東西の世界万国で発祥したリズムの根本原理をなす重要な要素であることは言うまでもなく、これを使わずしてリズムは生まれないと言っていいほど、必須の機能です。タムとコンガを切り替えるスイッチにもちょっと感動しましたが――。

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