アルバム『Gの洗礼』は空前絶後の大傑作アルバムに?

ドラマチックなミキシング―「Bisco Fuzz」のサウンド

【リバーブはSoftube TSAR-1】
ビスコ缶を叩いてフィンガーリズムを取り入れた120秒弱のオリジナル曲「Bisco Fuzz」をアップしています。前回「童心に立ち返って―『Bisco Fuzz』のレコーディング」ではレコーディングまでの行程について書きましたので、今回はそれ以降のミキシング&マスタリングについて触れておこうと思います。

【ビスコ缶リズムのトラックに挿したSSL 4000E】
そもそも缶をスティックで叩くのではなく、指で叩く際の音というのは、かなり小さいです。ビスコ缶を指で叩いた時の音は、なまった感じの柔らかい音なのですが、録音の際のNeve 88RSチャンネル・ストリップでも、けっこうコンプを通した後のゲインを上げているわけです。
ミキシングにおいても、このビスコ缶のリズムのトラックには、UADのSSL 4000Eチャンネル・ストリップを挿し、コンプとEQで音を整え、またゲインを上げています。その際のレベルのピークは確か、-6dBに届くくらいだったかと思います。このリズム・パートがメインになるので、たっぷりと音像を厚くするために1.5kHzあたりを持ち上げ、3kHz付近をややカット、それから高域では10kHz以降をシェルでブーストし、なまった感じを保ったまま、気持ちのいい感じの音に仕上げました。ちなみにSSL 4000Eのダイナミクス・セクションでは、エキスパンダー/ゲートも使用して、ゲインで持ち上がった空調ノイズをカットしています。

リバーブは珍しくSoftube TSAR-1を使用し、ドラム用のルーム系プリセットでビスコ缶のリズムをさらに目立たせています。Roland JD-Xiでダビングした808&909系のスネアのトラックにも、TSAR-1の別のプリセットでプレート系のリバーブを付加しています。TSAR-1のリバーブはエレクトロ系のサウンドにはとてもよく似合い、その粒子感の具合が私は好きです。昔、ZOOM STUDIO 1204というマルチ・エフェクターのリバーブがあって、粒子感がよく似ています。EMTやLEXICONとは違う、やや湿った感じのサウンドと表現すべきでしょうか。

【マスタリングでOZONE 8のEQ処理を施す】
マスタリングのOZONE 8の処理では、EQで超低域をカット、10kHzを僅かにブーストし、エキサイターでは低域成分に倍音を付加しました。

こうしてミキシング以降の行程についてすらすらっと書いてしまいましたが、なかなかこのビスコ缶を使ったフィンガーリズムを、それなりのレンジでレベルを稼ぐミックスにまで持っていくのは、初心者の方にはかなり難しい作業だと思います。おそらくそれぞれの段階でレベルを稼いでいるうちに、あのなまった感じのサウンドが変形したり、硬くなりすぎてしまうかも知れません。
一番最初にマイクロフォンをSONY C-38Bに選択した理由というのも、こうしたミキシングの成り行きをあらかじめ想定していたからであり、このフィンガーリズムが曲の印象のメインではないのなら話は別ですが、レベルを稼ぎつつ一番目立たせるサウンドにしなければならないのは、やはりハイレベルなミキシングということになります。リズムの定位を変えることでも効果がありますが、複合的な手段で気持ちの良いサウンドを構築していくことが重要になります。サウンドは生きものであるということを念頭に、いい盛り合わせの活け作りを心がけたいものです。

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