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音源のリアリズム―「初夏の沐浴」

先月Cubaseで打ち込んだ「初夏の沐浴」のレコーディングについて。

前回の「『初夏の沐浴』―音楽を作る楽しさのアンサンブル」で書いたことは、自宅の普段音楽制作に用いない“サブPC”にCubase(=Cubase Pro 9.5)をインストールして、簡易的に32鍵MIDIキーボードをUSB接続し、ちまちまと2分半のこの曲を打ち込んだということ。そして曲のコンセプトに合わせ、ハンディ・レコーダーを用いて自宅の風呂場でシャワーなどの音を録ったこと。

【レコーディングされた「初夏の沐浴」のオーディオ・クリップ】
さて、Pro Toolsでのレコーディング作業(32bit浮動小数点/96kHz)では、まずその録った素材クリップを新規プロジェクトに取り込み、それからCubaseでの作業の際に書き込んでおいた「初夏の沐浴」のMIDIファイルを読み込ませ、MIDIトラック及びオーディオ・トラック、AUXトラック、マスター・トラックをあらかじめ作成しておくことから始まります。
それぞれのMIDIトラックのクリップ(MIDIデータ)は、パートごとの録音の際、MIDIケーブルを伝って実機のSC-88Proに出力されます。音源から出た音はアナログ・ミキサーのMackie 1604-VLZ3を介してインターフェースのApolloに通り、UADのDSPプラグインNeve 88RSチャンネル・ストリップでコンプ処理、といういつものパターンになります。

しばらく実機のハチプロを使っていなかったので、それぞれ個別のパートを録る際、やけに音源がリアリスティックだなと感じました。
それは“本物の楽器に近い”という意味とは少し違いますが、Cubase上でのプラグインのSC-88Proの音と比較すると、打ち込みの際にはもやっとしていたのが、実機からの音はだいぶ、やはりリアリスティックなのです。実機につないであるケーブル、アナログ・ミキサー、インターフェースを通じてNeveのチャンネル・ストリップ・プラグインでのコンプ処理などあらゆる要素があっての話ですが、それにしても音の輪郭がまるで違います。

だとすると、CubaseでハチプロのVSTプラグインのみでオーディオ・クリップを作成したとしたら、まるで違うハチプロの音を再現することになるわけで、Pro Toolsでのレコーディングにおけるこの音は、絶対に得られない、ということになります。単に、この曲は“ハチプロ音源”を使用しました――と表明したところで、レコーディング・システムが違えば、同じ音源でもまったく違う音になるということであり、ある意味特化した、というか特権的な、非常にぞくぞくするような話でもあります。

こうしたかたちで録られたオーディオ・クリップの、まだあくまで仮ミックスでのトータル・サウンドをモニターしながら、風呂場での(湯をジャバジャバと掻き立てた)環境音をどこに配置するかを決め、全体の構成をしばし冷静な態度で見きわめます。
これら合わせたものを聴くと、当初Cubaseでちまちまと32鍵の鍵盤で打ち込んでいた趣とはだいぶ異なり、音が耳元に迫ってくるという威圧感を感じながらの、生暖かな「初夏の沐浴」に変貌していることが分かり、レコーディングの重要性をあらためて感じました。それはつまり、PC上のソフトウェアだけで書き出し生成したトータル・サウンドでは絶対に得られない、秘密の何かがそこにある、ということです。

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