プチ・ソング「人間」の人間哀歌

映画的な演劇的な―「ぶどうパンと牛乳びん」

【Cubase Pro 9.5でのプロジェクト画面】
これもまた「健脚ブリーフ」のプロダクト同様、昨年より“投げ出していた”曲で、昨日、ようやくアップグレードしたばかりのCubase Pro 9.5で打ち込み開始した「ぶどうパンと牛乳びん」という曲について。実は昨年の時点では、ジャケット用にと、被写体のオブジェの“牛乳瓶”をスチル撮影しただけにとどまり、すっかりプロダクトを止めてしまっていました。

自分にとってはまだ真新しい感覚のCubase Pro 9.5なのですが、Cubaseではミキシング作業をせず、MIDIプログラミングのためだけに使用しているため、アップグレードしてもさほど何が違う、ということを意識せずに済んでいます。ただし新機能の、メトロノームの鳴り方をいろいろ変化させることができる、という点では、より打ち込みしやすく使い勝手が良くなるかも知れません。今回に限っては、そうしたCubase Pro 9.5の使い勝手云々は脇に置いておいて、既に「ぶどうパンと牛乳びん」という曲の核心に気持ちが集中しているので、ここではそういう話をしておきたいと思います。

昨年の時点で思い描いていたこの曲のコンセプトというのは、原田マハさんの小説『ジヴェルニーの食卓』(集英社文庫)に登場するそれぞれの芸術家達――すなわちマティスだとかドガだとかセザンヌだとかモネだとか――からインスパイアされた「創作と日常の気まぐれ」であり、昨日のCubaseでのMIDIプログラミングの初期の段階(リズム打ちとピアノによるコード進行のプリプロ段階)では、その曲調の雰囲気から、なんとかそれが表現できるだろうと、とりあえず自分なりに腑に落ちた次第です。なんとかヴォーカルを入れたいと、事前に歌詞も書き留めておきました。

「ぶどうパンと牛乳びん」は別段そうした芸術家達を讃えたり、登場したりするのではありません。また決して絵画の話なのではなくて、一組の男女が出会って別れる他愛ない、本当にごくありふれた日常の情景を歌詞に表現しているのだけれども、曲調はエレクトロと木訥なピアノのソロを“奇妙に”複合させたものであり、全体の雰囲気はやや明るめでとても映画的かつ演劇的です。ピアノの旋律(プラグインMODARTT Pianoteq 6 PROでSteinway Model Bを使用)がそれなりに気品を保っているかなとというところで、「創作と日常の気まぐれ」というコンセプトはなんとか感じられるでしょう。一部のリード系の音源としては、久々(?)にArturia Analog Lab 3でのSynclavierを使用しています。

以前の私の曲で、「舞踏のための音楽プロジェクト」における「肖像」も“芸術家”、“ピアノ”というコンセプトでしたが、「ぶどうパンと牛乳びん」はそれよりも明るめで、どこか太陽の光を感じます。昨年、この曲のプロダクトを始めようとした頃、個人的に家庭の事情においてそれとは真逆の状況に置かれ、なかなか西欧的な太陽の暖かい光を感じることができなかったため、やむなく“投げ出していた”わけです。しかし、今、ようやく暖かい太陽の光を感じることができ、イメージしていた「ぶどうパンと牛乳びん」が輪郭を表してきました。お楽しみに。

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