プチ・ソング「人間」の人間哀歌

「Julian」の荘厳な響き

「舞踏のための音楽プロジェクト」第8弾の「Julian」。ピアノとシンセ・パッドによる荘厳な響き合い。

「New Dream」の曲の最後で、歪んだノイズの中から小さく徐々に浮き上がってくるピアノのフレーズはこの「Julian」に引き継がれ、ある意味、これら2つの曲は組曲のようになっています。
しかし、そのピアノのサウンドはまるで違っていて、「Julian」のピアノはとてもクリアなサウンドになっています。ちなみに、「New Dream」の方のピアノは、MODARTT Pianoteq 5 PROの“D4 Jazz BA”。「Julian」のピアノはCubaseで打ち込みをおこない、同ソフトウェアの“Model B WIDE”を使用し、こちらはハーモニック・ペダルをオンにしています。

OXFORD REVERBの“Hall”プリセット
連なったピアノをイメージするため、ミキシングの段階で「Julian」のピアノには同じリバーブ、すなわちWaves H-Reverbの“Large Bright Hall”を使おうかと思いましたが、考えを変えました。たとえピアノが同じようなフレーズでも、それぞれ曲の方向性がまったく異なるのです。それを言葉で言い表すのはとても難しいのですが、「Julian」のピアノには独特の静謐さと力強さがあります。やはりそれは、同じリバーブで処理をしても意味のないことなのです。

「Julian」で使ったリバーブは結局、OXFORD REVERBの“Hall”でした。こちらのリバーブ・タイムは1.41秒です。ホールをシミュレートしたとても生々しい響きで、ただ豊かなだけではなく、耳できちんと、その仮想ホールの壁に当たった跳ね返りの反射音を感知できると思います。つまり、「Julian」という曲の方向性では、「室内の空間」の響きが重要だったのです。
 この曲のミキシングは、いい意味でデジタル臭さを失って、アナログのナローな位相や僅かな歪み感がピアノの骨格の心部を形成し、その響きが適度な湿り気を帯びています。ピアノが単にその音程の弦を叩いて鳴らしているだけではなく、もっと複雑な神秘的な、音の強弱や密度感であるとか反射音の鳴り方、そうした様々な要素でその音の世界が構築できるという点で、ピアノは楽器のクイーンであり、音の珠玉であると思います。

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