使い慣れたヘッドフォンとレコーディング&ミキシングの話

よみがえった「明日の燈を」

「明日の燈を」Pro Tools画面
オリジナル曲「明日の燈を」の[2016 Version]が完成しましたので、この曲のミキシングについて解説したいと思います。尚これにより、古いヴァージョンの[2012 Version]は削除しました。ご了承下さい。

この[2016 Version]は、1999年当時のサウンドのニュアンスをほぼ踏襲しています。ちなみに、[2012 Version]のイントロで鳴っていたパワー感のあるシンセ・パッドはmicroKORGの音色だったのですが、ああいった派手なイントロはこの曲のイメージを損なっていた、という思いもあり、今回はできるだけ1999年のサウンドに近づける努力をしました。

ディレイはWaves Super Tap
ヴォーカル録りで使用したマイクロフォンはNeumannのTLM 49で、深めのコンプが掛かっています。ミキシングにおけるヴォーカル・パートのプラグイン処理は、まずディエッサーで歯擦音を抑え、コンプでゲインを上げ、EQで不要な低域の除去や高域の伸びを強調し、モジュレーションをかけてヴォーカルの音像が少し浮かび上がるようにしています。
さらにヴォーカル・パートにはディレイとリバーブがかかっていますが、ディレイは今回、WavesのSuper Tapを使用しました。

WavesのSuper Tapは非常に直感的なエディットができ、ディレイの音像を視覚的に操作しつつ、その左右のディレイのタイミングもリズムやメロディのノリに合わせて簡単にエディットすることができるのです。この曲においては、ヴォーカルにかかるディレイはとても重要な役割を果たしていて、これを外してしまうと、ヴォーカルのリズム感が失われてちょっと不自然になってしまうのです。

Waves Aphex Vintage Aural Exciter
それからもう一つ、ヴォーカル・パートには今回、WavesのAphex Vintage Aural Exciterをかましています。これはEQで高域の伸びを強調するのとは別物の、独特な倍音付加効果になり、一言で言えば音色が派手になります。
もともとエキサイターの効果は好きで、20代の頃やっていたミキシングでは、エキサイターもどきのEQ処理をヴォーカルに多用していました。ただしこれをかける際、やはりディエッサーでしっかり処理しておかないと、かえってヴォーカルが耳障りになってしまうので注意が必要です。

「明日の燈を」のオケは当時、YAMAHA QY-70でプログラミングしたために、パートの数がやや多く、チャカチャカとしたアレンジになっています。この曲のミキシングの難しさは、いかにオケのチャカチャカした感じをそのまま残しつつ、全体のレベルを整えることができるか、でした。
しかし逆に、過去の曲を再現することで、当時理想としていたオケの立体感の中に位置するヴォーカルとの関係、そのバランスについて、忘れていたものを思い出すきっかけとなりました。
立体的に膨らんだオケの中にヴォーカルを置くためには、ヴォーカルは深めのコンプをかける必要があること。リズムの肝となるバスドラやベースはこの音像の底部となるよう、浅めのコンプでアタックをほとんど削らないようにすること、など。

こうした立体的な音像を形成すると、リバーブもあまりかけなくていいという面があります。個人的には「明日の燈を」の制作で音楽の作り方、音の作り方の基本を学んだ印象が強いです。作るのはかなり難しい曲でしたが、それとは別に、純粋に曲の雰囲気やテーマなりを感じ取っていただければ、それで十分なのです。私自身、この曲のテーマに対する気持ちは、昔も今もまったく変わりません。是非、聴いて下さい。

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