プチ・ソング「人間」の人間哀歌

「これぞ運命」のリアレンジメント〈5〉

トータル・コンプで使用しているFG-RED
コラボ曲「これぞ運命」のリアレンジメント。最後はミキシングについて説明いたします。

実はミキシングの作業に入る直前、どうしても新たなパートが必要だと気づき、Pro Tools付属のソフトウェア音源AIR Xpand! 2を利用してクラビネット系のフレーズを新たにレコーディング。さらにヴォーカルのパートをiZotope iris 2でサンプリングしたパートも追加レコーディングして、最終的に(ガイド・メロディを抜いた)オケ全14パート、ヴォーカル全9パート、計23パートのマルチ・トラック・レコーディングであったことを書いておきます。

さてミキシングについてです。
まず全体のトータル・サウンドを確定するために、マスター・トラックに3つのプラグインを挿しました。前段からトータル・コンプのためのSLATE DIGITAL VBC FG-RED(モデルはFOCUSRITE REDコンプ)、中段にWaves SSL 4000Gチャンネル・ストリップ、後段にWaves J37 Tape。トータル・コンプのみバイパス状態にして、中段後段の2つのプラグインによるサウンドのアウトプットがトータル・サウンドの下地となります。

コーラスをワイドに広げたS1 Stereo Imager
リズム系とベースのパートからダイナミクスとEQを決めていったわけですが、ミキシングでは私はいつもお決まりのプラグインを挿すことにしていて、リズム系やヴォーカルにはSLATE DIGITALのFG-401とFG-Nの組み合わせをかまし、その他のパートにはWaves CLA-76(今回のリビジョンはBLUEY)とAPI 550Bとほぼ決まっています。使い慣れているという点とそれらのサウンドの特性を耳で覚えているからです。

今回のミキシングでいちばん難しかったのは、ピーク成分を多く含んだリズム系とバックグラウンド・ヴォーカルのバランスとレベルでした。
欲を言えば両方アタックの効いた大きなレベルで聴かせたいのですが、レベル的にそうもいかず、周波数帯域のバランスを取りながら、両方のピークを叩くのに手間が掛かりました。
バックグラウンド・ヴォーカルはWaves S1 Stereo Imagerを使って聴感上ワイドに広げ、HPFでかなり低域を削っています。コンプのリリースを少し長めにするのもコーラスを整えるのに必要です。

ミックスのファイルを生成したDA-3000(機材下)
今回のミキシングの作業から、マスター・トラックの出力をアナログ出しし、デジタル・マスター・レコーダーのTASCAM DA-3000のA/Dコンバーターを通じて24bit/96kHzのミックス・マスター・ファイルを生成することにしました。
これによって余分な高域や低域の成分がわずかに減衰され、空気感がややまろみを帯びて締まった感じになります。

ミキシングについてはここですべて紹介することができず、例えばヴォーカルにかかったモジュレーション・サウンドの作り方やリバーブの性質やかけ方などについては別の機会に書くことにします。
「これぞ運命」の制作は全体を通じてとても楽しいものでした。オリジナルの楽曲とは少しサウンド的に違ったベクトルに向かいながらも、醸し出すエキゾチックな雰囲気は共通したものがあると感じています。
アナログの良さを引き出しつつ、デジタル・サウンドの良さも引き出す。そうした中で独自のサウンドをつくり出す。それがミキシングに求められているのだと実感します。

何はともあれ、「これぞ運命」を何度も聴いて存分にお楽しみ下さい。

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