羊とグアナコ―その刹那の遊宴

ダイナミック・レンジという魔物

【Softube TSAR-1 Reverb】
「OP-1を使ったサウンド・インスタレーション」は5曲(「Red Beans」から「Green Sandpiper」まで)をもってファースト・ピリオドを打ちました。ここではその5曲までの総まとめをしたいと思います。

曲調こそ違えどこの5曲はすべて、同じOP-1の音源を使うということから、OP-1をケーブルOYAIDEのHPC-35Rでアナログ・ミキサーMackie 1604-VLZ3に通し、そのアウトをMOTU 828xにつなぎ、Pro Toolsでレコーディングをおこないました。ミキシングではJ37 Tape→CLA-2A→API 550Bといったプラグイン処理を施したのも同じであり、マスター・トラックにはEMI TG12345を挿したのもまったく同じです。

そのほか、例えば「Geisya Asakusa Sushi」のミキシングでは、Softube TSAR-1 Reverbを挿して、AUX経由で空気感のようなものを加えたりしていますが、このようにミキシングではほとんど同じプラグインを配置して、微妙にその中での処理に違いはありますが、5曲のサウンドの統一感を図ったわけです。


しかし私は、この5曲で一つの実験を試みました。それはマスタリングでの処理です。
マスタリングではIK Multimedia Master EQ 432をマスタリング用のEQとして挿し、その後ろにiZotope OZONE 6を挿しています。このプロセスは5曲とも同じです。

ここでの実験というのは、(以前より気になっていた)マキシマイザー・モジュールでのOut Ceilingの値によるダイナミック・レンジの聴感的な影響についてです。
Out Ceilingはマキシマイザーによる音圧上げの最高限度の値を設定します。私はこれまでの曲においてOut Ceilingの値を「-0.1dB」に設定していましたが、これを「-0.3dB」に下げた場合、その聴感的影響はどのようなものか、作品にどんな影響を及ぼすのか、試してみたかったのです。

5曲のうち、最初の「Red Beans」は-0.1dB、それ以降の4曲は-0.3dBに設定しました。さあ、これによる影響はどうでしょうか?

リミッターとして考えれば、これは聴くまでもなく、-0.3dBに設定するとダイナミック・レンジがその分縮まって、コンパクトになることは想像がつきます。しかし実際にやってみると、想像以上にサウンドの変化があり、大きな影響だと気づきます。
まず、単純にレンジが縮まるという感じはあまりしないと思います。コンパクトに縮まるという感じではなく、何かが欠落したという感じに似ています。つまり、全帯域の伸びやかさだとか高域のヌケが損なわれ、アナログ・レコードのような爽快感がなくなり、まるで昔のCDのサウンドのようです。
これはおそらく、比較して微妙に感じられる違いだと思います。どちらか片方を聴いただけでは、そんなふうには感じられない程度の変化です。しかし、実際に比較すれば、「Red Beans」以降の4曲には気持ちの良いヌケが損なわれたことが分かります。

この実験の結果、私はやはり、Out Ceilingの値-0.1dBの方が好きなサウンドです。無論、この値を今後踏襲します。
それにしてもヌケというのは、レンジの違いで変わるのだという証明になりました。アナログ系統の場合、ケーブルの特性でダイナミック・レンジに影響があるとすれば、それはヌケの問題に関連するということになります。

この実験はあくまで補足的なもので、「OP-1を使ったサウンド・インスタレーション」のコンセプトとは関係ないことですが、敢えてマスタリングをやり直さず、このままのマスターで残しておくことにします。

この実験の内容はともかくとして、気楽に「OP-1を使ったサウンド・インスタレーション」を楽しんで聴いていただければ幸いです。

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