使い慣れたヘッドフォンとレコーディング&ミキシングの話

「Summer Girl Fashion」的サウンド

インスト未完曲「Summer Girl Fashion」のレコーディング&ミキシングについて解説したいと思います。

他の稿で何度となく書き記している通り、この曲で使用したシーケンサー、YAMAHA QY-700は今となっては旧態とした打ち込み機材ではあります。プロの方でもいまだに使用し続けている人がいるという話を聞いたりすると、正直驚きの念を隠せない部分があるのですが、打ちづらくちまちまとした面が逆にアレンジに生かされて、そうしたスタイル特有の楽曲を作り出しているのではないか、と思ったりもします。
昨今の日本のコマーシャル・ミュージックの傾向を鑑みると、和声の荘厳さよりリズムの軽快感を重要視している、それが流行りなのではないかということが感じられ、そうなるとQY-700のような旧態シーケンサーの方が生きてくるのではないでしょうか。

さて、最終的に仕上げた「Summer Girl Fashion」のサウンドというのは、かつて私がQY-700を現役機材として使っていた頃のサウンドとはまったく別物、と思っています。
昔は所有していた機材がしょぼく、コンプレッサーやEQを自在に扱うことが不可能で、もっとナローなサウンドでした。

今回、BELDEN 8410ケーブルを使用してQY-700からのOUTPUT 2chをPro Toolsで取り込み、ミキシングでいくつかのプラグインをかましています。インサート順列としては、J37 Tape→SLATE DIGITALのVBC FG-MU→API 550Bで、クリアだったデジタル・サウンドがこれらを通って一気にアナログ・サウンドに変化しました。

VBC FG-MUコンプレッサー
VBC FG-MUは、Fairchild 670とMANLEY VARIABLE MUを模したチューブタイプのヴィンテージ・コンプレッサーで、チューブ独特のサウンドが得られます。
ただ、QY-700のドラムセットのハイハットやタムがそもそもハードにコンプレッションされたようなサウンドになっているため、かけすぎるとこれらのパートが目立ち、コントラストが強くなってしまいます。そのため、後段のAPI 550Bでは、100Hzあたりの低域を持ち上げつつ10kHzあたりの高域を抑えています。

往年のテープ・レコーダーを模したMAGNETIC II
マスター・トラックにインサートしたプラグインは2つ。NOMAD FACTORYのMAGNETIC II→WavesのSSL 4000Eチャンネル・ストリップ。ここではSTUDER A820プリセットでその磁気テープ感を醸し出した後、SSL 4000EのEQで超高域と超低域を少し削り、カマボコ型に。
ちなみに、A820は私が卒業した千代田学園のスタジオで使用していたマスター・レコーダーであり、その時のサウンドは当時のメモリアルCDによって参照できる個人的なリファレンス・サウンドとなっています。A820サウンドは言わば私にとってスタンダードなアナログ・サウンドなのです。

実際今回、QY-700の音源をPro Toolsに取り込んでみて、しょぼくなると思っていたサウンドが意外にも、ケーブルやらプラグインやらの処理でけっこう聴けるサウンドになったことはびっくりしました。以前にもQY-700サウンドの実験をしました(ホームページの「実験コーナー/QY-700の音を探る簡易レコーディングテスト」)が、その時は当時のサウンドを再現していたので、今回のように的確な処理を施した場合のサウンドは初めて聴いたのです。

QY-700は打ちづらく制作しづらい、という面があるにせよ、サウンド的にはけっこういい音してるなということが分かり、懐かしさ以上に新鮮な発見をしたように思います。

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