「せつおちゃんのバースデー」のサウンド・メイキング

オリジナル・ソング「せつおちゃんのバースデー」を公開しています。

昨年の6月、当ブログで「44.1kHzの謎」を書きました。音の高解像度を意味する“ハイレゾ音源”というワードが世間一般でも盛んに飛び交うようになり、ハイレゾのままのマスターを好む傾向が次第に強くなっています。
「44.1kHzの謎」では、そのハイレゾ・ブームに対するアンチテーゼ、すなわち16bit/44.1kHzへの個人的なこだわりや魅力について書き述べ、何故そう思うのか、の答えをいずれ出したい、と結んでいました。
今度制作した「せつおちゃんのバースデー」は、ステレオ・サウンドにまとめられた音響的観点において、32bit浮動小数点/96kHz(ハイレゾ)から16bit/44.1kHzへ落とし込んだ技術の、一定の答えを出したつもりです。ここでは、そのことについて暗に触れずにおきたいと思います。

「せつおちゃんのバースデー」は非常に多くのパートを要し、その数はおよそ50に及んでいます。その大部分が後半の構成を占めているオーケストラ(管弦楽器音源)で、金管や木管のほか、コントラバス、チェロ、ヴィオラ、バイオリンの弦楽器、ティンパニやスネアの打楽器となっています。
しかも冒頭のオーバーチュアでは、これらオーケストラの一部と3つのアコギ、ピアノのパートが絡みます。ここではアコギとピアノが中低音部を担い、サウンドのパワー感を引き立たせてくれます。

もしレコーディング・フォーマットを16bit/44.1kHzにしていたならば、このどっしりとしたパワー感はおそらく出ません。

後半でのオーケストラゼーションでヴォーカルが複数加わり、大ごった煮状態になります。それぞれの音色のチューニングと定位付けによる音像のバランスによって、あくまで実験的ではありますが、シンフォニーとしての圧力は感じられると思います。これもまた、16bit/44.1kHzでレコーディングしていたならば、倍音が折り重なってくるパワーは得られなかったでしょう。

ところが、ハイレゾから16bit/44.1kHzに落とし込んだ場合、うまくやればその解像度の高いパワー感がほとんど残ります。これはとても不思議なことです。

ここ最近、個人的にプラグインはAbbey Road Studio系を使うことが多かったのですが、やはり、私のサウンドの原点はSSL卓であり、今回はほとんどのパートにプリアンプ的な意味で「NLS CHANNEL」を挿して、基礎的な熱量を加え、すべてをまとめたマスター・トラックには「SSL G-Channel」を使って全体のサウンドをコーディネートしています。

敢えて言えば、今風ではない古いやり方で音像を作り、ミキシングをし、ステレオにまとめるというやり方。これが私のこだわりと言えばこだわりです。もし音楽を体感して楽しんでもらえるならば、再生用のマスターはハイレゾじゃなくても構わない、という主義。

ということで、「せつおちゃんのバースデー」を聴いてサウンドを身体で楽しみましょう。


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