「早春賦」の制作

Utaroヴォーカルによる唱歌「早春賦」を公開しました。

昨年の夏以降より、制作の準備を進めていましたが、ヴォーカルのアプローチの仕方の改善、Pro Tools 11への移行準備などと併行してしまったため、制作が遅れに遅れ、今期の公開となってしまったことをお詫びいたします。

この「早春賦」に対しての個人的な思い入れは、ホームページに書いた通りなのですが、唱歌全般に言えることとして、やはりポップス的な楽曲に慣れてしまっている以上、難しく感じる面が多々ありました。

原曲は8分の6拍子、ヘ長調。これを自分のヴォーカルに合わせて、ニ長調にしました。楽譜自体は、以前にも書いたように、中学音楽教科書に準拠したもので、Cubaseでプログラミングし、曲の構成を多少作りかえています。当初はピアノとヴォーカルのみ、というコンセプトでしたが、間奏となる部分のメロディに2つのシンセ音を加えています。

使用したピアノ音源は、フィジカル・モデリング音源ソフトウェアPianoteq 4で、プリセット・ピアノは“Erard”(エラール)を選択。太く豊かな低音と歯切れのいい中高音のバランスの良さが特徴です。このErardピアノは歴史的に見ると非常に興味深いのですが、ソフトウェアでは1922年製のものを再現しているとのことです。この「早春賦」の曲調と合うと判断し、Erardを選択しました。

Pianoteq 4での音場エディット画面
フィジカル・モデリング音源ソフトウェアPianoteq 4(Version 4.5)では、「音響放射モデル機能」があります。
これは、擬似的にアウトプットのマイクロフォンをピアノの様々な位置に設定することができ、独自のアンビエントを再現することができます。
私はいつもこのソフトウェアを使用する時、この調整にかなり時間をかけます。ピアノの印象を決定づけるものであり、ヴォーカルとのバランスも考慮しなければならないからです。

ヴォーカルで使用したマイクロフォンは、LAUTEN AUDIO LT-321 Horizonです。これはNEUMANN U67を意識して製造された真空管マイクロフォンで、太く柔らかく、ヴォーカルが浮き立って感じるのが分かるかと思います。

パート数が少ないせいもありますが、Pro Tools 11でのこれらのレコーディングは非常に快適でした。
ヴォーカルは4つのテイクを録りましたが、そのうちの2つのテイクを部分的にエディットしてヴォーカル・トラックのOKテイクとしました。
ちなみに、最初の録ったテイクは、若干真空管(マイクプリとマイクロフォン両方)の暖まり加減が足りなく、やや硬めの音だったのでNGとなりました。これらが確実に暖まるのに私は30分という時間を目安にしていますが、その日の気温や室温によって、どうしても時間的なずれが生じるようです。

Pro Tools 11上のトラックには、それぞれ、API 550BのEQとCLA-76(今回は“BLACKY”)コンプの組み合わせという私のミキシングのお気に入りプラグインを並べ、マスター・トラックにはこれまた同じくAPI 550BとJ37 Tapeテープシミュレーターの組み合わせを適用しました。もう私にとっては定番の設定です。

ピアノ音源、そしてヴォーカルの音色はマイクロフォンの特性が活かされてほとんど出来上がっている状態だったので、ミキシングにしろマスタリングにしろ、超低域成分の軽減と超高域成分の軽減、といった両端をわずかに削るような感じで終始しました。ほとんど微妙な調整です。

ということで是非、この「早春賦」を何度も聴いていただき、季節感ある情趣を楽しんでいただければと思います。


コメント