使い慣れたヘッドフォンとレコーディング&ミキシングの話

FREEDOM OF SPEACH

ヨシ寺島さんのコラム「FREEDOM OF SPEACH」
最近、個人蔵書の『SOUND & RECORDING MAGAZINE』(1991年12月号・リットーミュージック)を読む機会が多く、1991年当時の機材の流行であるとか、カーペンターズのスコアを眺めてみたりして、改めて学ぶべき部分があったりします。
ミュージック・ビジネスに関わるヨシ寺島さんの連載コラム「FREEDOM OF SPEACH」は、個人的に当時はあまり真剣に読んではいませんでした。“英国音楽業界のウラ・オモテ”というサブタイトルで、この号では屋敷豪太氏とミック・ハックネルの話題が中心になっています。

その前段の話題が非常に興味深かったのでピックアップします。

掻い摘まんで書きますが、当時、映画『ロビン・フッド』の主題歌であるブライアン・アダムスの「(EVERYTHING I DO) I DO IT FOR YOU」が全英チャートを13週1位に居残り、史上最長の記録を塗り替えた。ラジオでかかりっぱなしで吐きそう。ちっともいい曲じゃない、と知人ら。曲はそんなに悪いとは言わないけれど、やっぱりつまらない。歌録りのクオリティが低い。歌えないシンガー。曲のライターが怒って物を投げてる。日本の方々だって、あの歌詞とあの歌い方だったら嫌になると思う。アン・レノックスやリサ・スタンスフィールドらがこの曲をボロクソに言ってた――。

ちなみにこの号は連載2回目で、「売ることだけを目的に制作されたレコードなんて,もうたくさん!!」という見出し。

ブライアン・アダムスの「(EVERYTHING I DO) I DO IT FOR YOU」に対し、悪辣辛辣な内容だけれど、ヨシ寺島さんの文章はどこか英国人的な香りのする、皮肉さと茶目っ気があったりして、コラム自体は非常に骨太なニュース・ソースとなっています。

ということで、当時私はあまり関心を持っていなかった、ブライアン・アダムスの「(EVERYTHING I DO) I DO IT FOR YOU」を今頃になって聴いてみました。

それが全然悪い印象をもちませんでした。ヨシ寺島さんが言うほど、つまらなくはないし、必ずしも歌録りのクオリティが低いとは言えない。そもそもブライアン・アダムスはロック・シンガーだから、歌はあんな感じでいいのではないかと…。

確かに、この曲がずっとラジオやらテレビやらで流れ続け、いい加減辟易する面はあるでしょう。しかし客観的に、曲が悪いのではなくて、ブライアン・アダムスの当時のタイアップ多しに対する辟易さではないかと。周囲のコメントも、ちょっとしたジェラシーを含んだ部分があったのではないでしょうか。

これらのことは、音楽批評など鵜呑みにできるものではないし、時代が変われば評価も変わり、個人の嗜好も変わるということで、あくまで音楽とは、個人の趣味の問題なのだなということが分かります。逆に言えば、時代の流行に染まらず、本当に自分の好き嫌いで物事の価値を判断するというのは、難しいことなのかも知れません。

一方のアーティストは、持ち上げられ、叩かれの繰り返しであり、それもまたすべて華であると思うしかないのではないでしょうか。

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