アルバム『Gの洗礼』は空前絶後の大傑作アルバムに?

続・三位一体のディレクション

「三位一体のディレクション」の話の続き。もう少し詳しいところまで。

最近、一般雑誌などでも“劇伴”という言葉が広まっているように感じます。それも“サントラ”という業界用語を使わず、映画やドラマまでわざわざ“劇伴”と替えて表しているのは、やはり言葉のトレンドなのだなと思ってしまいます。

90年代の話になりますが、私の音楽制作の出発点も、その“劇伴”でした。とは言え、生演奏をするわけではないので、舞台のお芝居に音楽や効果音を合わせていく手段として、CD(コンパクトディスク)を採用していました。芝居に音を合わせていくにはキューのタイミングが重要になるので、コンマ数秒遅れるにせよ、頭出しという面でCDが最も適していると思ったからです(細かい効果音などの音出しにはサンプラーが相応しかったが当時非常に高価だった)。

そういった劇伴の音楽制作上、ありとあらゆる音楽ジャンルに対応すべく、その楽器音源の確保と効果音の充実さを図らなければならず、自ずと機材はそれに見合ったものということになります。つまり、PCM音源とシーケンサー機能ができれば一体化したようなもの。しかも安価で手に入れやすいもの。

さて、ここまでで一体何が言いたいのかということですが、音楽制作の場合、初期に自分自身が身体で覚えた機材の性質や使い勝手から、容易に逃れられないということ、なのです。私個人の問題で言えば、劇伴をやっている以上、例えばAKAIのMPC3000のような機材で制作が完結し得ることは到底考えられず、ああいった機材に最も疎いわけです。

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MASCHINEが優れているのは、まず何より音楽が反復の構造に則っていることを熟知している上で、どの音源(音源ユニット)を、どのグループで何小節反復させますか、というプレイヤーとの暗黙の問答形式を、GUIで直感的に操作できるようになっていることです。しかも動画編集のように見立てられており、イントロ~Aメロ~Bメロ~Aサビ~Bサビ~Cサビ~Cサビ~アウトロなど展開されるシークェンス毎に区分けされ、反復や順番の入れ替え、コピペが容易にできること。
特にドラムセットで個別のパートのMUTE/SOLOが簡単に行え、視覚的に分かり易く、編集が楽なので、直感でグルーヴやオカズを変えることができます。

こうして一旦、曲の全体がコンポーズされた段階でCUBASEに移れば、逆にMASCHINEではやりづらい作業を補完する形で行うことができます。1曲通しでMIDIをリアルタイムで打ち込むとか、テンポを細分化して揺らしたりフェルマータを制御したりとか。

MASCHINEはプレイヤーのアイデアや即興を「動的」に記録して練り上げることができ、CUBASEはそれをさらに客観視して「静的」に作り上げていく。もちろんこの2つのソフトウェアがあれば十分なのですが、私はさらに、生録によるダビングとミキシングを音響的な観点で重要視したい。ということでPro Toolsが必要になります。波形編集もここで行います。Pro Toolsは音質はもちろんのこと、メータリングでの管理が群を抜いています。

電子音楽を扱う、私自身の音楽制作の在り方として、“オールインワン”の時代はここに終わりを告げました。

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