「海」―その響きの世界

ヴォーカル曲の唱歌「海」を公開しています。まずはそちらをお聴きくだされば、と思います。

何と言ってもこの曲の主体は、高密度なリバーブ(残響)です。
今回ヴォーカルに使用したリバーブ・エフェクトは、iPhoneアプリ[hibiku]で、残響エンジン「chiverb」によるものです。他のリバーブ・マシンでは得られない、独特な感性と質感を携えた素晴らしいリバーブだと思います。

通常、マイクロフォンで録られたヴォーカルはミキシングの段階でリバーブを付加しますが、この「海」においては、アプリ[hibiku]を使用するため、iPadの内蔵マイクでヴォーカルを吹き込み、同時に残響が付加され、その合わされたヴォーカル音をPro Toolsで録る、という手段をとりました。ちなみに、その他のパートはすべてiZotopeのヴァーチャル・シンセ「iris」でのサンプリング音です。

レコーディングとしては、その濃密なリバーブを聴きながら歌うということになるのですが、ある種、その余韻で気持ち良くなる反面、非現実的な残響と歌との掛け合いというかぶつけ合いとなるので、テンポや発声のタイミング、テヌートの仕方など、非常に歌うのが難しいという面もありました。しかも残響がひっきりなしに付加される以上、歌い出しから曲の尻まで、1テイクで歌わなければなりませんでした。

さらにレコーディングを困難にしたのは、アプリ[hibiku]のアウトプット・レベルです。エフェクトのレベルが残響の密度によってほとんど飽和状態となるため、一瞬のレベルオーバーも許されませんでした。この点はアプリ側の改善点かなと思いました。

今回の「海」のコンポジションと全体像は、その制作において「chiverb」が無ければ不可能でした。この残響の独特な質感は、「chiverb」によってしか得られないものであり、そこから「海」の独創的なヴォーカルが作り出されているからです。

非常にエキセントリックな試みでありながら、唱歌「海」の美しさが伝わればいいなあと感じています。


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