プチ・ソング「人間」の人間哀歌

PICTURE BOOK

SIMPLY RED『PICTURE BOOK』
先日、SIMPLY REDの「HOLDING BACK THE YEARS」が聴きたく、1985年のファーストアルバムCD『PICTURE BOOK』を買い求めて、早速聴くことができました。

私はSIMPLY REDの2枚目のアルバム『MEN AND WOMEN』を中学3年だったか高校1年だったか、その頃に初めて聴いて、「LET ME HAVE IT ALL」や「MAYBE SOMEDAY...」など、ミック・ハックネルのパワー感あるソウルフル・ヴォイスにしびれたものです。最近のミックの映像を観たりしても、あの頃のパワー感は驚くほど顕在で、老練さにも輝きが増して、どこかフィル・コリンズに似てきたなと、個人的には思いました。

さて、『PICTURE BOOK』を聴くのは私にとって処女航海だったのですが、少しSIMPLY REDの話題から外れて、1985年当時の、コンパクト・ディスクにおけるデジタル・マスターのサウンドに関心が向いてしまい、半ば困惑した状態になりました。

当ブログの「2つのコンパクト・ディスク」で紹介した、山下達郎氏の『ポケット・ミュージック』は正直、それほど悪いサウンドではないと思いましたが、1985年の『PICTURE BOOK』は明らかに、初期のコンパクト・ディスクの“評判の悪さ”を代表するサウンドと感じました。これはおそらく、当時のSONY PCM-1610によるA/D変換に起因するものと思われます。

SONY PCM-1610のサウンドというのは、どうも中低域の厚みがまったく感じられないサウンドになってしまうようで、『PICTURE BOOK』のミックスが高域の良く伸びたドンシャリであるが故に、かえって高域の艶が無くなっていると感じました。そして当然、ベースもスネアタムあたりも迫力が感じられない…。

今こうして『PICTURE BOOK』を聴いて、私はこのアルバムのサウンドを否定的にとらえているのではなく、あくまで当時のデジタル・サウンドを知る手がかりの発見に喜んでいるのです。

そしてむしろ大きな問題となるのは、まさに現在の、良質なデジタル・プロセッサーを得ている我々作り手の技術にのしかかっていることであり、もしそこでくだらないイコライジングを施せば、マスター・サウンドはたちまちあの頃の、艶の無いスカスカなデジタル・サウンドになってしまう、ということなのです。

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