プチ・ソング「人間」の人間哀歌

「仰げば尊し」の制作〈五〉

「仰げば尊し」の制作に関する稿はこれを最後とし、前回に引き続いて“ひな形”について説明します。

「仰げば尊し」のPro Tools画面
一般的に、すべてのパートのレコーディングが終了し、ミキシングの工程に入る時、それぞれのパート(トラック)が無数に散らばっているかと思われます。
ミキシングの基本は、まずそれぞれのパートをEQ+コンプ+その他のエフェクトで音作りをし、全体のバランスを大まかに整えます。バランスを整える際は、左右のステレオ感だけでなく、奥行きの立体感を整えることも重要です。

ここからは私なりのやり方になり、“ひな形”の核心部分になります。
まず、全体のバランスを大まかに整え終わったら、セクション分けをします(トラックのグルーピング)。私は4つのセクションに分けてしまいます。つまり、
①リード・ヴォーカル
②バックグラウンド・ヴォーカル
③その他のパートをまとめた2MIX
④セクション①から③をまとめたマスター2MIX

です。そして①から③のセクションには、EQ+コンプをインサート、④にはアナログ・コンソールをシミュレートしたサミング・プラグインを2つインサートします。これらの部分が“ひな形”です。他の曲をミキシングする際も、各セクションに与えるプラグインをまったく画一化=同じにするのです。

すべてのセクションの“ひな形”=プラグインを説明すると長くなるので、2MIXだけ説明しておきます(その他のセクションについてはまた別の曲の機会に)。

SSL 4000 E-Channel
2MIXに与える“ひな形”のEQ+コンプは、SSL 4000(E-ChannelとG-Channelのいずれか)とWavesのCLA-3Aの組み合わせです。このセクションにおけるプラグインの組み合わせは、これ以降の作品の同セクションにも適用し、画一させます。

4つのセクションに分けることで、奥行きのバランスがさらに取り易くなります。そしてそれぞれに与えられた“ひな形”のEQ+コンプで、ヴォーカルを浮き立たせたり、2MIXを柔らかくしたり硬くしたり、パワー感を付加することも容易になります。最終的なマスター2MIXセクションにおいても、全体の音色や音質を整えるのが容易になります。

この後の工程のマスタリングでも、コンプ+マキシマイザーの“ひな形”を画一していますが、こうしたやり方で“ひな形”を形成したことで、ミキシングでやるべきことと、マスタリングでやるべきことが明確になりました。
2MIXに配置したCLA-3Aコンプ
クライアントの難題な要求に対しても、4つのセクションを少しいじるだけで、解決してしまう可能性が高くなるでしょう。

例えて言うなれば、今までは、曲毎にまったく違った機種の飛行機の操縦桿を握っていました。それでは非常に煩わしく、最終的なサウンドへの持っていき方が、曲毎に違ったアプローチの仕方をしなければならず、頭を抱えます。

“ひな形”方式の採用によって、もうこれからは、どんな曲をやるにしても同じ機種の操縦桿になります。どこをどういじればいいのか、経験が蓄積され、応用が利きます。

バーチャルなオリジナル・コンソールを構築し、すべての曲をこのコンソールで料理する――。

この生まれて間もないオリジナル・コンソールに、何か名前を付けたくなりました。[Dodidn*]ではこのコンソールを使って、今後の曲を作業していくことになります。

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